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[November 2007] エントリー一覧

November 27, 2007

エッセイ:ピアノが弾きたい Vol.11

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 ピアノと私の関係は、ちょうど、人生を共に歩いて行く、パートナーのようなもの。ピアノと泣いて、ピアノと笑って、ピアノと悩んだ。ピアノは私より、いつもちょっと前を歩いている。私のすべてを知っていて、泣きたくなったら、その白と黒の両腕を広げて、受け止めてくれるし、煮詰まって難しい顔をしていれば、私が喋るまで、黙って待っていてくれる。

 ピアノは何でも知っている。モーツァルトの楽しみ方も、ヘンデルの美しさも、グノーの優しさも。音楽の喜びを知った時、ピアノはまるで、指揮者のように、私の演奏を導く。


 ピアノ嫌いがすっかりなくなった今、私は、もう一度、ピアノを習い始め、表現することの難しさと喜びを、体感している。音楽って、こんなに美しいんだ! それはまるで、澱みない泉の底をうっとり眺めるような、深い溜め息が出る瞬間だった。それにしても、弾き語りという方法で、私のピアノ嫌いを克服してくれた「歌」には、本当に感謝。そして、この「歌」の存在は、さらに大きくなり、気づけば、素晴らしい先生に出会い、イタリア歌曲を、日本歌曲を知り、ピアノ以上に愛しているのだから、人生って、どこでどう繋がるかわからない。


 ピアノへのトラウマを体験した私は、大きく回り道をしたけれど、むしろそのおかげで、ようやく、音楽という野原が、どんなに広くて、どんなに平等で、どんなに穏やかで寛容か、知ることができた。音楽とは喜びだ。演奏とは表現だ。ああ、泣きたいくらいのトラウマを体験できて、本当に良かった。私にしか表現できない音楽が、これからも生まれていく。一度は自信を失くしたけれど、もう大丈夫だよ。ピアノよ、これからもよろしく。そして、ありがとう!
(おしまい)


※幼稚園の卒園式の後。このワンピース、結構気に入っていたよ。

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投稿者 きつね子たぬき : 10:03 PM | コメント (2)

November 23, 2007

エッセイ:ピアノが弾きたい Vol.10

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 弾き語りを覚えてから、私にとって、ピアノと歌は、同じ「音楽」という枠の中で、一体化した。ピアノを弾けば、自然に歌が生まれて、歌を歌えば、自然と鍵盤に触れたくなった。この頃には、もう、ピアノは恐ろしいトラウマの獣ではなく、私を支えてくれる「頼もしい奴」になった。そう。ピアノと私の関係は、友達というには、よそよそし過ぎるし、かといって、家族というほど、血の繋がりも感じない、親しみを込めて、「奴」と呼ぶのが、ちょうど良い関係になったのだ。

 ところで、当時の私は、毎日、日記を書いていた。日記に書く文章は、次第に詩になり、すると、その詩を段々、メロディにしたくなり、私は、ピアノに向かい始めた。メロディ作りは、詩を口ずさみながら、それに合わせてピアノ伴奏をつけるという形で、出来ていった。最初にコードをつけて、後から主旋律を作るといった具合だ。


 最初は、ポップスを真似た歌が生まれた。だけど、その歌が、いまいち面白くなかった。今考えてみれば、あれは、「R&Bとブルースが混ざったポップス風の歌」で、なんだか中途半端だったし、「歌う心地良さ」しか、追求していなかったのだ。独りよがりというか、自己満足というか、外に表現していくには、あまりにひ弱だった。「R&Bとブルースが混ざったポップス風の歌」と割り切れば、それはそれで、良いのだろうけれど、私には、詩そのものを大切にしたい気持ちがあった。自分が心地良いだけの表現でなく、メロディやリズムだけを追った「ミュージック」ではなく、詩歌をきちんと表現できて、且つ、音楽も大切にできるような、一つ一つが、しっかりとした表現。悶々……。


 何でここまで悩むかって、贅沢な私は、詩も音楽も、どちらも捨てられなかったのだ! 詩も書きたかったし、音楽も演奏したかった。二つを一つにできるようなものは、ないかな? そう考えた私は、「ピアノ曲に合わせて詩を朗読する」という、ポエトリー・リーディングに辿り着いたのだ。辿り着いたとはいっても、当時の私は、ポエトリー・リーディングというものがあることさえも知らず、私は私で、独自の方法で、勝手に、詩と音楽を表現していこう、と思っただけだった。この一見、捨て身のような、やっつけ仕事のような行動が、後に、私の活動に欠かせない、KNT Musicをつくることになるんだな。(続く)


※自転車が倒れて、呆然な感じ…。「捨て身」っぽいよね。そして、頭のバンダナは、どちらかといえば、三角巾をしたオバチャン…。

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投稿者 きつね子たぬき : 02:58 PM | コメント (0)

November 13, 2007

エッセイ:ピアノが弾きたい Vol.9

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 私のピアノ嫌いを克服してくれたもの。それは、だった。歌とピアノ。歌でどうやって、ピアノの克服ができたかと言えば、それは、弾き語りというスタイルだった。

 歌っている時は、トラウマはやって来なかった。なぜなら、歌に集中しているから。歌には詩があるし、その内容を考えていれば、私の頭の中に、トラウマのやって来る隙を与えないのだ。それに、詩は私の心を慰めてくれた。つらい気持ちそれのみを、認めてくれて、傷口を覗く勇気を与えてくれた。ピアノは、トラウマに怯えることなく、私の心を洗い流してくれる楽器となった。


 一番好きな弾き語りは、鬼束ちひろだった。アルバム毎に、ピアノ弾き語り楽譜集というのが販売されていて、それを買っては、大好きな鬼束ちひろを歌った。KOKIAも好きだった。B‘Zのバラードにも挑戦した。『いつかのメリークリスマス』『消えない虹』『もう一度キスしたかった』『ALONE』などなど。大好きな曲を、歌って弾ける喜びというのは、本当に素晴らしいものだ。


 弾き語りを知るまでは、特に人前でピアノを弾くことは、本当に苦痛で、音楽の授業で、ピアノ伴奏を頼まれたら、いかに切り抜けるかばかり、考えていた。指に包帯を巻き、
「怪我をしたので、今日は弾けません」
 と、せこい小細工をして、嘘までついたものだ。あれは絶対に、バレていた……。それも、弾き語りを知ってからは、ピアノ自体に恐怖を覚えなくなったので、気持ちがずっと軽くなった。と言っても、私が弾き語りを知ったのは、大学三年生頃。思えば、中学一年生からずっと、トラウマに縛られていたのだから、本当にもったいない時間を、過ごしてしまったと思う。(続く)


※お台場の船の科学館で。左が私。母親の着ている毛皮のコート。バブルを感じさせます…。

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投稿者 きつね子たぬき : 04:22 PM | コメント (2)

November 07, 2007

エッセイ:ピアノが弾きたい Vol.8

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 誰かが呼んだのだろう。空き教室で一人、頭の中がめちゃくちゃになって、無言で泣きながら抗議している私の元へ、先程の音楽教師がやって来た。「泣くことじゃないじゃない」と、彼女は言ったが、「泣くことじゃない」んじゃなくて、「泣くほどピアノが嫌」なのだ! どうしてわからないのだろう?

 ピアノなんて大嫌い! そうしていつまでも、泣いていたかったが、立てこもる時間が長ければ長いほど、教室に戻りづらくなる。さすがに、もうやめなくては、と思った私は、帰りのホームルームには、出席した。教室内が、ガヤガヤしているのを利用して、気まずい私は、ササッ! と席に着いた。すると、そんな私を見つけた、斜め後ろの席のT君が、「(私の)演奏、良かったよ」と声をかけてくれたのだ。私は未だに、納得できない気持ちでいっぱいだったが、T君の言葉が、嬉しかった。


 その言葉も有難かったけれど、私がもっと嬉しかったのは、その後。私の隣の席のK君が、「(私の)演奏、良かったよ」と言ったT君に対して、「やめろよ、また泣いちゃうだろう」と、止めてくれたことだ。T君の優しさも、嬉しい。だけど、K君の優しさも、私は好きだな。


 人は、優しくされると、惨めな気持ちになったり、悲しい気持ちが浮き彫りになって、余計、悲しくなってしまったりする。K君のいい所は、そっとしておく優しさとか、言わない優しさとは、またちょっと違う、気の利いた優しさをくれたことだ。あれは、本当に嬉しかったなあ。
(続く)


※すごくいい写真だと思わない? 一番気に入っている写真です。多分、野川公園。ちなみに、左が姉、右が私。普通、逆だよね…。

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投稿者 きつね子たぬき : 07:21 PM | コメント (0)