« September 2007 | トップページ | November 2007 »
[October 2007] エントリー一覧

October 31, 2007

エッセイ:ピアノが弾きたい Vol.7

25.jpg
 私のピアノ嫌いは、尋常じゃなかった。中学三年生の時。この時は、もうピアノ嫌いが始まっていたのだが、そんな中、またもや、合唱コンクールのピアノ伴奏を頼まれたのだった(これでもう、三年目だった)。その日は、音楽の授業で、合唱コンクールで歌う曲の初めての「合わせ」だった。

 曲は、『In Terra Pax(地に平和を)』という、私のピアノ能力を、遥かに超えた技術を要する難しい曲だった。とりあえず、何とか自分で練習はしてみるのだが、どう頑張っても、「合わせ」の日までに、完成させられなかった。それでも、「合わせ」は、しなくてはならない。つっかえがちに弾く私に、音楽教師は、「完全に弾かなくても、弾けないところは、適当に弾いておけばいいのよ」と、ちょっとイラッとして、急かしてきた。そうは言うけれど、編曲の才能でもない限り、中学生に(しかも私に)、適当に弾く音楽技術があるわけがない。適当に弾けるのなら、完璧にだって弾けるさ。


 次第に私は、何で私が?! という気持ちになってきた。というのも、この難曲の伴奏を依頼された時。私は、きっぱり「弾けない」と断ったのだ。ちなみに、この曲は多数決で選ばれた。私は、難易度からしても、『In Terra Pax』は無理だから、『モルダウ』が良いと、そちらに手を挙げた。しかし、ちょっと発言権の強いW君に流されて、(みんなの弱虫…)結局、伴奏者の技術など無視され、『In Terra Pax』に決まってしまった。


 そういう成り行きもあり、私は、何で私が?! という気持ちになったのだ。そして、練習が終わると、私はピアノの蓋を、バン! と閉めて(学校の楽器なのに!)、ツン! と音楽室を立ち去った(まだみんな教室に残っていたのに!)。音楽の授業の後は、確か給食と掃除の時間だったのだ。しかし、私は、何と、空き教室に立てこもり、そのどちらにも出席しなかったのだ。
(続く)


※府中、野川公園で。自転車がなぎ倒されているというのに、写真撮影が続行されているのは、なぜだろう…?
【KNT ROOM】私のHPです

投稿者 きつね子たぬき : 07:08 PM | コメント (0)

October 24, 2007

エッセイ:ピアノが弾きたい Vol.6

24.jpg
 さて、話は私のトラウマに戻る。人前での演奏が苦手ならば、一人で弾いていればよろしい。だから、十三歳のトラウマについては、人前では演奏しなければ、苦しむことは少なかった。しかし、一人で演奏するようになった私は、そこでまた、新たな悩みを抱えることになる。

 ところで、生きていると、十三歳の頃のトラウマの他にも、いろんなトラウマを抱えることがある。小さなトラウマ、大きなトラウマ。あの頃の私は、とても神経質だった。だから、些細なトラウマにも、いちいち立ち止まっては、悩んでいた。不幸なことに、そういうトラウマを抱えやすい私にとって、ピアノは、これらのトラウマを、閉じ込めておいた檻から、放つための合図のようになってしまったのだ。


 どういうことかと言うと、ピアノを弾いている時というのは、黙っている時である。歌のように、口を動かす演奏スタイルではないから(弾き語りは別にして)、どうも考え込みがちになる。今はピアノそのもの、音楽そのものを楽しむことを知ったから、ピアノを弾きながら考え込むということは、なくなったけれど、あの頃の私は、まだ、音楽の楽しみ方、演奏の喜びを知ってはいなかった。


 だから、「ピアノを弾く」という、この無言の時間を、当時の私はよく、考える時間に充てていた。私にとって、黙っていることは、考え事をすることである。そして、考え事をすることは、トラウマの闇に戻ることだった。何頭ものトラウマを、心の檻に閉じ込めていた私にとって、ピアノは、その檻の扉を開ける、お節介な鍵だった。
(続く)


※3、4歳の頃(左)。右の姉のぬいぐるみに注目。これは前回(Vol.5)の写真のぬいぐるみと同じ種類。おじさんが2人にくれたんだ。ちなみに姉のこのぬいぐるみの名前は「トラちゃん」。私は「トラちゃん」が取られてしまったため、「トラトラちゃん」という無理な名前を付けたのである…。
【KNT ROOM】私のHPです

投稿者 きつね子たぬき : 12:33 PM | コメント (0)

October 03, 2007

エッセイ:ピアノが弾きたい Vol.5

23.jpg
 私のピアノ人生を振り返ってみた。弾き始めてから、早二十年。確か、五歳くらいに始めたのではなかろうか。

 初めて弾いた曲は、チャルメラだった。まだ、ピアノ教室へも通っていない頃。だから、三、四歳くらいだったろう。姉が弾く隣で、何となく、一番右端の鍵盤で、知っている曲が作れた、といった感じだった。姉はびっくりして、急いで父と母を呼びに行ったのを覚えている。日もすっかり暮れ、小さな星を抱えた群青色の空が、窓の外に広がる時刻だった。


 「お母さーん! サチエ(私の本名です)がピアノ弾いたよー!」

 姉は確かにそう言った。「お父さん」と呼ばなかったのは、なぜだろう。やがて、姉は父と母を従えて戻って来た。私は頼まれるままに、もう一度チャルメラを弾いた。

 チャララ~ララ、チャラララララ~♪

 父と母も驚いて、すごいと私に感心した。私はもう一度弾いた。やはり、みんなすごいと言った。


 しかし、当時の私は、別にすごくも何ともないのになあと思っていた。すごいと言うから、弾いてみるだけで、本人に自覚がまったくないことはよくあることだ。音楽の知識がゼロの人でも、楽器を目の前にすれば、何となくでも知っている曲を演奏することはできるだろう。音符が読めない小学生もで、リコーダーでドラゴンクエストの「序曲」を吹いてしまったり。そういえば、ちびまるこちゃんは、植木等のスーダラ節を吹いていた。あの頃の私も、それと同じことだった。(続く)


お知らせ:来週、再来週とお休み致します。次回は24日の予定です。


※3、4歳の頃の写真だと思う。おじさんからもらったトラのぬいぐるみを扱う。ちなみに、このトラのぬいぐるみの名前。「トラトラちゃん」。もう1つ「トラ」が多かったら、戦争映画になっていた…。
【KNT ROOM】私のHPです

投稿者 きつね子たぬき : 12:06 PM | コメント (0)